Diary-2010 of 【公開中】アネックス仙川ファクトリー

2010年5月

バラの季節になりました。

雨上がりの良い香りによその庭先につい立ち止まってしまいます。

我が家の庭には山ぼうしの木に白い花が咲きました。

猫の額というより鼻先(笑)ぐらいの狭い庭ですが、畦地が植えておいてくれたもので、ちょうど2階から手が届きそうな位置で樹と対面出来ます。

晴れ間と時間を見つけて、2階のテラスで朝のコーヒータイムを楽しみます。

ほんの一時ですが、最近ちょっと片付いたテラスでの深呼吸の時です。

片付けた人 真奈加さんは、ついにそこに今はまっている多肉植物の簡易ビニールハウスを作りました。

テラスがさらに狭くなる~!!と、顔をしかめた私ですが、その中に居る不思議な植物が顔を赤らめるように色づいたり、花を咲かせるのを見て、これは何と動物的な植物??と驚いたり、ニヤニヤしたりしています。



小さい頃から山や海、虫や花に触れた事のある人は自然への敬意、思いやりや想像力豊かな大人になると言います。

本物の舞台や、美術などに触れて育つのも同様にかかせない栄養、人間力になるはずですネ。

私も子育ての時は忙しかったけれど、時間を見つけては家族で山や川に行きました。時間に余裕の有る時は、(これはたまにです!笑)保育園の往復を『ピクニック…』なんて言って自転車を止めて歩いて行ったりしたものです。

子育ては自然に子供の目線やリズムで動くので、大人が忘れた大切なものを呼び起こされるのですネ。かけがえのない時間ですね!

今はその子供達も自立して、私は好きな仕事に没頭してきました。

テラスのコーヒータイムは、多肉植物の小さな変化や樹の色づき、生活の回りの自然な循環を改めて気付かせてくれました。

『みや子さん、深呼吸してね~』という娘達にもちょっとだけ感謝する時間でした。小さな植物が体と心を助けてくれる実感がありました。


加藤みや子

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2008年12月18日


幼児期(2~3才)の子供は宇宙人



 今日のテーマは虫。エリックカールの「はらぺこあおむし」や、たくさんの絵本の中から子供たちが一番気入ったのが「くさる」(なかのひろたか作)でした。



 食べ物が腐り、ごみを捨てると虫がきます。土にうめると…土の中にはみみずやだんごむしが住んでいる、ごみを食べて、うんこしたりして、もっとくさりやすくして、土にまざってとけてしまう。それを植物が栄養にする。~草や木が大きくなる。大昔の恐竜も死んでからは虫に食べられ腐って土になり…いろいろな生き物はこれをくり返し続いて来た~とお母さんが話す本。



 表紙には赤い大きなスイカの切り口にリアルなハエがとまっていました。虫の動きを発明する子供達をゴロゴロ虫ダンスの後の、3才のJ君との会話から。「恐竜はどうしていなくなったの?」「死んじゃったんだ」「どうして死んだんだろう」「いっぱい生きたから死んだんだ…」「じゃあだれも恐竜に逢ってないの」「ううん、動物たちが逢っているんだ。だから動物は恐竜のことみんな知ってるんだ!!」んんん~じょうねん君の宇宙論を聞きながら今日は我亭主の命日~彼は好きだった宇宙の彼方でフフフ…と笑っているかな。彼の描いた「じょうねんのカタツムリ」は線ではなくて、色でうずを巻いた色の宇宙がありました。





加藤みや子


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2008年9月

 ブラジル5都市公演から戻りました。

 24時間の長い飛行時間中に起こった北米のハリケーンや、日本の集中豪雨などを擦り抜け、乾燥したブラジルの巡回公演-国際交流基金主催事業-から無事日本へ戻りました。

秋風が肌寒くなりましたが地球規模での天候異変の中、皆様の夏はいかがでしたでしょうか? 

 サンパウロでは設備の整ったセスキピニェイロス劇場、マナウスではブラジルの宝石と呼ばれるオペラハウス・アマゾネス劇場、ブラジリアでは赤土の上のアリーナ・フナルテ劇場、クリチバでは2000人収容のホール・グァイラ劇場、リオデジャネイロではダンスのメッカ、カーシャ劇場、それぞれの都市の香りと形態の異なる劇場にクリエーションし続けた巡回公演でした。

加藤みや子ダンススペース、笠井叡、伊藤キム他のゲストダンサーと音楽o加藤訓子、美術o三輪美奈子含むスタッフ33名にブラジル人ダンサー10人を加えてのこの大規模な巡回公演は、都市毎に新聞やテレビなど多くのメディアに取り上げられ、観客との交流はもとより、両国の参加者同士の繋がりや収穫を残し、サンパウロ日本人学校のワークショップをもって終了しました。

 

 岩手県岩泉町安家の中学校15名のワークショップからスタート、岩泉の民話を収集したものをテキスト(ミワユウ)にした「笑う土」は東京-盛岡-ブラジル5都市のワークショップと公演を経て変容、熟成していきました。その締めくくりはサンパウロのカンポ・リンポ丘の日本人学校の小中学生100名とのワークショップとなりました。

黒い土と湿度の多い草の上で走った安家中学校、赤い土と乾燥した草の上で走ったサンパウロの日本人学校、この二つの土を結ぶものが作品「笑う土」のテーマ「場所(トポス)-からだ-土の記憶に繋がりました。10人のブラジルダンサーとは昨年10月、サンパウロでのオーディション&ワークショップ後、遠隔ビデオリハーサルを重ね、ブラジルのネイティブなダンスの掘り起こしを宿題に再会しました。5日程のリハーサルで本番という猛スピードでしたが8ヶ月各々暖めたものが回を重ねるごとにぶつけ合い開花していきました。日本の民話の座敷わらしと言える「サシペレレ」がブラジルにもあると聞き、そのショートワークを挿入したり、日本語のかけ言葉にポルトガル語も加えていきました。客席の笑いの反応もいいタイミングでありました。アマゾネス劇場客席中央の通路を日本人ダンサーが雅楽音の中ゆっくり雁が渡るように登場し、ブラジルダンサーはサンバをゆっくりと舞うように舞台を横断しました。



 2003年イースト・ギャラリーで初演を行った作品「サンド・トポス」は、初演から五年が経ち、今回ブラジルにて劇場版改訂再演となりました。メインダンサーは前回と同じく奇妙な親子の設定の笠井叡、伊藤キム、加藤みや子。そして砂の役として新たに笠井瑞丈、岩渕貞太、畦地亜耶加の三人が出演し、ブラジル人チェロ奏者のMarcelo Martinez Vieiraが加わりました。初演の日本版では舞台が溝になりプールの様な空間から、ブラジルではプロセニアムの舞台用に三輪美奈子の美術によって新しく創り変え新たな空間が生まれました。オペラハウス・アマゾネス劇場の包まれるような舞台空間はまさにこの作品のためにあるようで、その劇場に出逢えたことに感動しました。



「サンドトポス」の最終回となったブラジリアのフナルテ劇場はアリーナ状のサーカスがよく行われる所。ダンスの客層は厚いとはいいがたい劇場でしたが、決められた振りをその場と時間の中、リアリティをもって変容していく体が出現して、笠井、伊藤、加藤、と砂の化身の3人と客席とは一体となり、別れがたいようにスタンディングオベーションが続きました。



この後、クリチバでは大ホール、リオでは中ホールでそれぞれの場のバージョンで

「笑う土」と加藤ソロ「日記」が上演されこの2カ所は日系の方も沢山来場されました。



この巡回公演はそのプロセスを大切にしたもので、出来上がった作品を持っていく従来の方法と異なり、またアーテイスト・レジデンスでコラボレーションしていく方法とも異なる独立性があるもので、それ故の苦労と、それ以上の喜びに溢れたものでした。



土は地軸をつらぬいて伯(ブラジル)に辿り着く…。

ネイティブなものを掘り起こす時、文化の差異を越えて人の営みや生命力の共振があることを実感します。ブラジルの地に100年前に移り住んだ日本人、その大地に根づいた世界各地からの移住者の思いがつくった人間味豊かなブラジル。深い木々の緑、赤土の色と共に我々の体に染み込み新しい細胞のようにふつふつと残っています。この細胞がぶつかりあって形と成っていく日を思い描いています。



このプロジェクトにスタートよりお力を添えて下さった多くの方々、このブラジル巡回公演に多大な支援を頂いた国際交流基金とサンパウロ日本文化センターの皆様、各地劇場の制作及びスタッフクルーの方々、そして観客の皆様に心より感謝を申し上げます。


加藤みや子


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日本照明家協会雑誌8月号「STAGE DOOR」掲載文



『伯の赤い土、日本の黒い土』 加藤みや子



 私は昨年の10月、始めての南半球の地、ブラジルのサンパウロ空港に降り立った。この8月のブラジル5都市巡回公演(移民100周年記念国際交流基金主催事業として加藤みや子ダンススペースが笠井叡、伊藤キム等ゲストと、そしてブラジルのダンサーも含め公演する)に向けて劇場下見とブラジル側ダンサーのオーディションのためだった。ブラジルは先住民とヨーロッパ、アフリカ、そして日本も含むアジアからの移民による民族文化が混じり合い、その風土に対応しながらそれぞれの文化のルーツが移り根付いているように思える。そのせいかサンパウロの街ではどこかで見たようなN.Y.のダウンタウン、古いポルトガルの教会等を思い出す風景があった。只、樹々はいかにもブラジル的で大きく勢いがあり、熱い国の表情をしていた。

 

 今回持っていく作品の一つ「笑う土」は2007年岩手県岩泉町安家の民話に取材したもので、山の学校のワークショップからスタート、11月東京初演、12月に盛岡で岩手版を発表した。この8月の舞台は、そのブラジル版となる。

場所と体を結ぶダンスコラボレーションは、さらに美術(三輪美奈子)、音楽(加藤訓子/作曲、演奏)が出発から加わり、広げていく…というものだった。“安家”はアイヌ語で“ワッカ”…「美しい水」といわれ、龍泉洞などから湧き出る美しい水は森に流れ川沿いにはいくつも洞穴があり鳥居があった。川に足を入れて水と踊るダンサーは光の粒子ようだった。洞穴に入ったダンサーの水に揺れる足下には黒く光る土があった。この地には、座敷童子や山の神が畏敬の念を持って、なお大らかに語られた民話が眠っている。それをほっこり掘り起こす感覚で言葉や自然を体に取り込んでダンスは創られていった。

 

 サンパウロから三時間程のフライトで、アマゾン川に近流域のマナウスへ行った。牛の祭り、ボイブンバで有名な地で、街の中心にある世界遺産になっているオペラハウスは、ブラジルの宝石といわれていた。この古いヨーロッパの香りのする劇場で、歌舞伎スタイルの花道もある盛岡劇場に続き「笑う土」を上演する。アマゾン川の船着き場に行ってみた。川沿いの路店には、原色の魚や果物、物売りの声がマナウスの熱気を伝えていた。その時茶色い河を縁取って続く赤い土が眼に飛び込んできた。思わず「これがグラジル!」と叫んでいた。探していたブラジルの風景が赤銅色となってそこにあったのだ。

 

 サンパウロでのワークショップでは、ブラジルには座敷童子と同じようにイタズラなサシペレレの民話があり、風神や山神の伝承があると聞いた。ブラジル人のダンサー達はそれをテーマに即興を踊ってくれた。そのダンスを観ながら懐かしい思いに駆られ、これから互いにそのルーツを辿り出逢っていく楽しさを予感した。ブラジルの乾いた赤い土と、水を湛えた日本の山の黒い土が地核を貫いて出逢おうとしている。

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2008年1月

新年おめでとうございます。今年も皆様にとって良い年でありますように。物は溢れていても、人間にも自然にも厳しい現在、自分の心と体で感じとる感性の大切さ、それを育む芸術の意味を問われているように思います。

 スタジオの小さな世界ではありますが、コミュニケーションのとれる場、自分を表現出来る場であるように、ここを基地として飛び立てるようにと願っています。

 昨年は春から何度も岩手に行き、盛岡でまたさらに山をいく安家でのワークショップを行い、作品「笑う土」を仕上げていきました。青山円形劇場11月に続いて盛岡劇場12月と巡演しました。岩手日報翌日の朝刊一面のトップニュースに掲載されたのにはびっくりしました。雪路をバス仕立てて来て下さった安家の方々が涙を流して感動して下さり、盛岡や安家の子供達もプロダンサーに混ざり堂々と舞台を務めました。地域に出かけ出発したら作品を再びそこへ戻す…。苦労もありましたが沢山の物を頂いて来たと思います。これもまた、ブラジルへ繋いでいきたいものです。


加藤みや子

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2007年11月

40周年記念公演、また青山円形劇場における「笑う土」加藤みや子ダンススペース公演2007、を無事に終えることができました。研究生徒の方々はもとよりご父兄の皆様 御協力の元盛況に終わり評判も高い会となりましたこと、心より御礼申し上げます。



改めて振り返ることもそう多くはないのですが、長期継続表彰をうける人の列、一人一人の顔に歴史と今がだぶって胸がいっぱいになりました。舞台の経験は大きく、舞台に上がって目をふせていた子も次の稽古には目をキラキラしてやってきます。このステップを教師も親御さんも見逃さないようにしたいものですね。日々の積み重ねがドーンと舞台にさらけ出されるのですから。子供にとっても大切な晴れの気分を体験したはずです。その成果の現れは人によって違うのでじっと観察していますが、大きな変化に驚かされます。歳を重ねても、プロと言われても、舞台の不思議さやドキドキ感は変わりません。それどころか不信心者のわたくしでさえ、開演前には舞台の神様に祈るような気持ちです。そうして出た舞台で解放されると、言い難い幸せのときに遭うことが稀にあります。その時を観客のみなさまと共有、交感できたらとやってきました。その感覚を稽古の中でも大切に育て、身体訓練と共に表現の楽しさやコミュニケィションの大切さを伝えたいと思っています。



この11月には、2008年ブラジル公演の下見とオーディションで、サンパウロ、マナウス、クリチバへ出かけます。12月22日は盛岡劇場で「笑う土」「蓮の花」の公演があります。



年末まで大忙しとなりますが、このメインメンバーの活躍の成果とエネルギーを持ち帰りたいと思っております。寒い中インフルエンザ発症の冬とか…。くれぐれもお体大切に新しい年に備えましょう。



加藤みや子